毎日のように響く、マンションの上階からの騒音。子供が走り回る音や床をトントンと叩く音、深夜の洗濯機の音。
たまりかねて苦情を言いに行ったら「うちじゃない」の一点張り。
それでもやっぱり真上から音が聞こえてくる。
「まったく、いつまでシラを切るつもりなの?」
「注意されても平気で大きな音を出し続けるなんて、なんて非常識な人なんだろう。」
でももし本当に、騒音を出しているのが真上の住人じゃなかったとしたら・・・?隣の住人が音の発生源だとしたら?あるいは斜め上の住人だとしたら?
そんなことが本当にあるのでしょうか。もしあるのであれば、まったく罪のない人に苦情を叩きつけてしまう恐れすらあります。
ここでは、マンションの音の伝わり方について説明しましょう。
真上から音がしても真上が原因とは限らない
真上から音が聞こえていても、実際は真上の住人ではなく斜め上の住人だったということは実際によくある話です。
また、下の階の音や2つ隣の部屋の音が真上から聞こえるケースもあります。
よって、騒音が真上から聞こえたからといって、真上の住人が騒音主だと極めつけるのは早合点です。
苦情を入れる前に、一度立ち止まって他の場所から音が聞こえている可能性を考慮しなければいけません。
マンションの音が複雑な伝わり方をする理由
では、なぜマンションでは遠くの部屋の音が聞こえたり、下の部屋の音が上から聞こえたりするのでしょうか。
その理由をみていきましょう。
音は壁を伝って聞こえる
まず「音」というものについてその原理を知る必要があります。
音の原理は空気の振動です。空気の振動がわたしたちの耳に伝わることで、「音」であると感知されるわけです。
マンションの音も同様です。ある部屋で発生した音は空気を媒介し、床や壁に伝達します。
そしてその振動がマンションの骨組みを伝っていき、遠く離れた部屋にまで到達するのです。
そのため、思いもよらないような場所から発生した音が自分の部屋に聞こえるということが起こるわけです。
コンクリートは空気の15倍も音を伝える
鉄筋コンクリート造のマンションなら音は響きにくいと思われがちですが、実際にはそうではありません。
実はコンクリートは音を伝達させやすいのです。
なんと、空気の15倍も音を伝えやすいということが実証されています。
たしかに鉄筋コンクリート造のほうが木造の住居よりは防音効果が高いですが、すべてのマンションがそうだとは限りません。
中には驚くほど音が筒抜けの鉄筋コンクリート造のマンションもあるのです。
「うちのマンションは鉄筋コンクリートだから音は大丈夫だろう」と思い込むのは危険です。コンクリートゆえに、音が伝わりやすくなってしまっているマンションもあるのです。
床の下の空洞で音が増幅される
- 音は壁を伝って聞こえる
- コンクリートは空気の15倍も音を伝える
これらの理由により、マンションでは遠く離れた部屋で発生した音が伝わってくることがあるということがわかっていただけたと思います。
では、それらの遠くの部屋で発生した音や、階下から発生した音のほとんどが真上から聞こえるのはどうしてでしょうか。
その理由は、「床の下が空洞になっているから」です。
マンションの床には、配管などを通すために空洞が設けられています。他の部屋から壁や鉄骨を伝ってきた音がその空洞で共鳴し、より大きな音に増幅されます。
床で音が増幅されることにより、その下に住んでいる人からすると天井から音が聞こえるというわけです。上の部屋の住人が発した物音だと感じるわけですね。
でも実際には遠くの部屋の音が伝ってきて、上階の床で増幅されているという可能性だってあるわけです。
このような空洞で音を増幅する現象は「太鼓現象」と呼ばれています。太鼓が大きい音が鳴るのは、その中が空洞になっているためです。
まとめ
- 音は壁を伝って聞こえる
- コンクリートは空気の15倍も音を伝える
- 床の下の空洞で音が増幅される
以上のような理由により、マンションでは複雑な音の伝わり方が起こるというわけです。
騒音主を特定するのは容易ではありませんが、このようなマンションの音の伝わり方の特性を把握しておくことで、不要なトラブルを回避できるかもしれません。
真上の住人に「うちじゃない」と言われた場合は、その話が本当である可能性も十分にあるということを念頭において、適切に対処しましょう。